読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

TEBUKURO’s diary

まだ出会っていないあなたへの手紙

オムレツ

f:id:TEBUKURO:20160707193651j:plain

 

この前の土曜日、図書館に行ったときのこと。

木陰で年配の女性が座り込んでいるのに気づいた。
 
「大丈夫ですか?」思わず声をかけたら、
「大丈夫よ。荷物が多くて少しくたびれちゃったから休憩してるだけなのよ。」
彼女の側には、ひとりではとても持ちきれないくらいの荷物。
聞くと、これからお孫さんに会いに行くそうだ。
「喜ぶ顔を想像したら、ついついあれもこれもってなっちゃって…」彼女は幸せそうに微笑んだ。
 
電車に乗るというので、
私は駅まで荷物を持ってあげることにした。
 
駅に着くと彼女は
「ありがとう。とても助かったわ。お礼をしなくちゃ…」
そう言いながら大きな荷物の中をのぞき込んだ。
「大きな箱と小さな箱、どちらがいいかしら?」
 
「お礼なんてとんでもないです」
って言ったんだけど、
「若いコは遠慮なんかしちゃダメよ」って。
 
「じゃあ小さな箱の方を…」言い終わらないうちに
小さな箱は私の手の中にあった。
おひさま色の箱はとても綺麗だった。
「ありがとうございます」
と顔をあげると、もうそこに彼女はいなかった。
 
箱にはフタがついていた。
カパっとそれを開けてみると、
空色のふかふかの綿の真ん中に
白くてまあるいものが入っていた。
何だろう?
よく見るとフタの裏側に文字が刻まれていた。
金色の文字。
 
 
たまごのたね
 
 
急に胸がドキドキして、手には汗がにじんできた。
落として割れてしまっては大変なので、
丁寧にフタを閉め、両手でしっかりと持った。
走り出したい気持ちをどうにか抑えて、
ゆっくり慎重に家まで持って帰った。
 
とりあえずその箱をテーブルの真ん中に置いて、ホームセンターへと急いだ。
一番大きなプランターと一番良さそうな土を買って帰り、割れないようにそーっとそーっと
たまごのたねを植えた。
 
それから毎日欠かさず水をあげている。
五日目の今日芽が出ていた。
小さな小さなかわいい芽。
 
たまごがなったらオムレツをつくろう。
おさとうとミルクを入れて。