読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

TEBUKURO’s diary

まだ出会っていないあなたへの手紙

ある旅の物語 1

f:id:TEBUKURO:20160608183532j:plain

 
「旅とは素晴らしいものだよ」旅人は言った。
「旅の素晴らしいところはいろいろあるが、
綺麗な景色を見、空気を肌で感じる。
それに何より仲間と出逢える。」
嬉しそうに語る旅人の瞳はキラキラと輝いて見えた。
「とても言葉で語り尽くせるものじゃない。
君も旅に出てみたらどうだい?」
 
『それもいいかもしれない』
そう思った僕は旅に出てみることにした。
 
何の準備もせず、
思いつきで出発してしまったものだから、
進む方向があっているのかさえわからない。
そもそも目的地を決めていなかったことに
今更気付いた。
 
旅人の言う旅の素晴らしさを見て感じる。
それを当面の目的としよう。
 
初日は張りきって歩いた。
未知の世界は不安ではあったが、
それ以上に新鮮な魅力があった。
道に迷い、途中で引き返したり、
転んで膝をすりむいたり。
そんなことさえも楽しく感じた。
 
その夜、旅に出たことを旅人に報告した。
予想通り旅人は喜んでくれた。
 
でも、次の日は動くことができなかった。
その次の日も、そのまた次の日も。
 
「旅はもうやめたのかい?」
旅人から連絡が入った。
「そういうわけじゃないのですが…」
 
何もわからないうちは闇雲に進むことができた。
だけど、ほんの少しでも知ってしまうと、
考え過ぎてどう動いていいのかわからなくなってしまったんだ。
 
「とりあえず進めばいい。少しずつでも毎日ね」
旅人はその言葉とともに一冊の本をくれた。
 
その本には、旅人が旅の中で得た知識がぎっしりと詰まっていた。
 
『もう少し進んでみよう』
僕はそう思うことができた。